News
ニュース

ステファン・ドゥネーヴ(指揮)インタビュー【後編】

2023セイジ・オザワ 松本フェスティバル(OMF)でサイトウ・キネン・オーケストラ(SKO)の指揮を務めるフランスの気鋭ステファン・ドゥネーヴ。2013年のラヴェルの《スペインの時》でフェスティバル初出演したドゥネーブは、2020年のOMFに出演予定でしたが、同公演は新型コロナウイルスの影響で中止。満を持してのOMF再出演となります。
フェスティバル開幕を前に、2023年6月、香港滞在中のマエストロにリモートで今回のプログラムから、小澤征爾総監督との出会いやジョン・ウィリアムズの音楽についてお話を伺いました。前編・後編の2回に分けてお届けします。
インタビュー【前編】

05_StéphaneDenève.jpeg
ジョン・ウィリアムズ氏と

───ドゥネーヴさんはジョン・ウィリアムズ氏の信頼も厚く、今回ウィリアムズ氏の来日決定のある意味では立役者と伺いました。
小澤征爾総監督がウィーン国立歌劇場音楽監督時代(2002-2010)から、ウィリアムズ氏には「ぜひウィーンや松本に来てほしい」と熱望していたけれど、松本に来ることはなかなか実現には至っていませんでした。そんな折に、昨年6月に来日したドゥネーヴさんが、SKO事務局からウィリアムズ氏に2023年松本でSKOを指揮してもらえないかとアプローチしているという話を聞き、その2週間後にワシントンでウィリアムズ氏の90歳を祝うガラ・コンサートを指揮するという偶然が重なったそうですね。ドゥネーヴさんがウィリアムズ氏にOMFや松本の良さをアピールし、また来日の際はサポートすると後押ししてくださったと聞いています。

誰もが賞賛する二人をまた一緒に見ることができるのは、日本の聴衆にとって素晴らしいことです。私にとっても、それが現実となるのは、夢のようなことです。この音楽の巨人2人を結びつけるお手伝いができるわけですから。

───ドゥネーヴさんからみて、ウィリアムズ氏はどのような作曲家ですか? 作品の魅力は?

11歳で映画「E.T」を見た時、初めて映画館の中で泣きました。私がこれほど感動したのは、物語の素晴らしさだけでなく、その感動が音楽によって表現されていたからです。
全ての若者が「インディ・ジョーンズ」などに感激していた時代でしたが(もちろん私も大好きでしたが)、のちに私はジョンの演奏会用の作品を発見しました。「ヴァイオリン協奏曲」「チューバ協奏曲」「チェロ協奏曲」等々。彼は演奏会用の素晴らしい曲をたくさん書いていたのです。特に素晴らしいのは「Tributes! (for Seiji!)」。この作品を私はフィラデルフィア管とともに演奏しました。つまり私は、ジョン・ウィリアムズの映画音楽ばかりでなく、演奏会用の作品も大好きだったのですよ。

最初にジョンと会ったのは、2007年ロサンゼルスでした。私がロサンゼルスのオーケストラを指揮している一週間の公演期間のちょうど真ん中に、彼がガラ・コンサートを指揮したのです。彼と初めて会って、ほぼ同時に友人となりました。なぜかわかりませんが、私たちはすぐに楽々と自由に話ができて、二人の間に素晴らしいエネルギーが流れるのを感じたのです。以降、頻繁にコンサートで会いましたし、タングルウッドでは演奏会を一緒に分担することも。
とても控えめで、小澤さんと同様に若い音楽家たちの教育活動に熱心で、生涯ずっと支援しようとしています。昨年のワシントンでの90歳記念のガラ・コンサートの指揮を提案してくださるなど、まるで心の父とも言えます。

───オーケストラ コンサート<Bプログラム>で指揮する作品はどのように選んだのですか?

私はジョンに全部の演奏会を指揮してほしいと思っていたので、彼に尋ねたのです「どの曲を私に指揮してほしいか」と。ですので、曲を選んだのはジョンです。彼は私のことをよく知っていますし、私が何を好きなのかも。
「E.T」の大部分を私が指揮しますが、これは私にとっても特別です。先ほど申し上げた通り、私がジョン・ウィリアムズを知った最初の曲ですから。今回この音楽を指揮することができ、とても幸せです。

06_StéphaneDenève.jpeg

───災害、疫病、戦争など、私たちを取り巻く社会状況は混沌としています。
その中で「なぜ音楽が必要なのか」という問いについてどのようにお考えですか?

ご質問ありがとうございます。私にとってその答えはとてもシンプルです。なぜなら、このセイジ・オザワ 松本フェスティバルという場で、音楽によって人々を集めて、言葉なしで伝えようとしているからです。みんなが集まり、一緒に伝えようとする感情こそ、世界でもっとも貴重なものだと思います。
オーケストラがいて、音響機器ではなくアコースティックに聴衆へ(その感情を)送りだすのです。シンプルな振動に過ぎないのですが、一緒に耳を傾け、音楽への愛、感情を一緒に分かち合うのです。
私たちは画面を通してでもなく、電話で話しているのでもありません。それは、現代世界でとてもユニークなことであり、信じられないほど純粋なこと。みんなが一緒になって、音楽的な感情を分かち合う─それは私にとって何か未来への希望のようなものです。戦争や緊張関係など、世界的な問題への解毒剤として。音楽は、共通の愛によって人々を結びつけます。だからこそ、子どもたちに音楽をするよう手助けをする必要が絶対にあると思います。学校で楽器を学ぶことは、人生を学ぶことでもあるのです。この学校によって人間がそれぞれ違うこと、話す言語が異なること、肌の色が違うことを学ぶことができます。そうした人間が一緒になって、アンサンブルの美しさを創り出します。この美しさほど素晴らしいものはありません。

───松本(都市)の印象について一言お願いします。

もともと山が好きですし、松本の街はエキゾティックで豊かな面があって、とても魅力的だと思います。小さな路があちこちにあり、自転車で走り回ることができます。道に迷ったりすることがありますがそれも好きですし、お城[松本城]はもちろん素晴らしいです。

もう一つ印象的なのは、蝉の声です。とても強くて…。森が、私が知っている木々とはまったく違っていたのも記憶に残っています。日本料理も大好きですし、松本では、時に洗練されたレストランで、時にシンプルなレストランで、美味しい夕食をいただきました。みんなとてもフレンドリーでした。ですので、また松本を訪れることができ嬉しいです!

インタビュー収録:2023年6月
聞き手:OMF広報
写真提供:ステファン・ドゥネーヴ
Photos courtesy of Mo. Stéphane Denève

関連公演

オーケストラ コンサート Aプログラム

2023年8月25日(金)、27日(日) キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館)
演奏:サイトウ・キネン・オーケストラ
指揮:ステファン・ドゥネーヴ

オーケストラ コンサート Bプログラム

2023年9月2日(土) キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館)
演奏:サイトウ・キネン・オーケストラ
指揮:ジョン・ウィリアムズ、ステファン・ドゥネーヴ